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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)10385号・昭55年(ワ)5569号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

四そこで、次に再抗弁について判断する。

原告と被告が昭和四三年一〇月二日に本件賃貸借契約を締結するに至つた経緯及び同月二八日に原告が被告に対し、右土地上にプレハブ構造のガレージの建築を許可するに至つた経緯は、いずれも前記認定のとおりであるところ、<証拠>を総合すると、原告は被告に対し、前記ガレージの建築を許可した際、賃貸借契約公正証書(甲第二号証)とは別に新たに契約書(甲第四号証)を作成し、土地の使用目的はあくまで自動車置場であつて、被告が他所へ移転するまでの間の一時的な使用であることを再確認し、かつ、建物には被告名義の所有権保存登記はしないこと、もし登記をする場合は原告名義とすること、本件賃貸借はいわゆる「時貸し」(一時使用)であるので当時の慣行に従つて権利金や礼金を授受しないことを取り決めたこと(権利金及び礼金の授受がなかつたことは、当事者間に争いがない)、賃料額は当初から昭和四七年一〇月までの約四年間据え置かれ、また、本件建物の登記については、昭和五〇年二月、原告を申立人、被告を相手方とする建物収去土地明渡を求める調停申立て後の同年三月までは、前記取り決めに従つて未登記のままであつたこと、本件賃貸借契約はその後三回にわたつて期間の更新がなされたが、これは原告が被告に期間満了により土地の明渡しを要求する都度、被告がいまだ移転先の都合がつかないことを理由に暫時の猶予を願い出た結果によるものであり、そのため更新された期間も最初は二年間、後の二回はいずれも一年間と短かつたこと、被告が現実に建築した本件建物のうち作業所の構造は柱や梁が軽量鉄骨造で屋根ば亜鉛メッキ鋼板葺であり、相当強固な部分もあるが、これは原告が明渡しに支障がないよう許可したプレハブ構造のガレージと異なり、原告の承諾の範囲を超えるものであつたこと、しかし、被告は原告に容易に取り壊しうるものと思い込ませ、原告も被告が短期間で右土地を明渡すものと考えていたこと、以上の事実を認めることができ、右認定に反する被告本人尋問の結果(第一回)は前掲各証拠に照らして措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。なお、被告は公正証書にその他本件の賃貸借契約書に短期間の賃貸借である旨を記載したのは、原、被告間でその意思がないのに通謀のうえ仮装してこれを記載した旨を主張するが、この主張にそう被告本人尋問の結果(第一回)は前掲各証拠に照らして措信し難く、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。

以上、認定の諸事実を勘案すれば、本件土地は、一時使用のため賃貸されたものと認めるのが相当である。

もつとも、前掲甲第二号証によれば、被告は原告に対し、本件賃貸借契約締結の際、権利金は支払わなかつたが、被告所有の前記八潮市の土地の登記済権利証を預けたことが認められる。しかしながら、右甲第二号証によれば、右権利証は本件土地の地代の支払を確保するために差入れられたものであることが認められるのみならず、証人中野弥平の証言によつて認められるところの、当時、本件土地を建物所有の目的で二〇年又は三〇年の長きにわたり賃借する場合に通常支払われるべき権利金の額(証人中野弥平の証言及び被告本人尋問の結果(第一回)によれば、本件土地の当時の時価約四二〇万円の六割程度であることが認められる)に比すれば、右権利証を預けたとの事実は、いまだ本件賃貸借契約が一時使用の目的でなされたとの前記認定を左右するものではない。 (河野信夫)

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